人と組織のその先に

人事・組織コンサルティングとITのマッチアップについて、日々感じたままに更新します

働き方改革

古くて新しい課題ということは、ずっと課題。

人事管理、労務管理の本質は実は変わっていません。こんな本を見つけました。昭和48年発行です。

手書きと活字の違いこそあれ、人事の仕事に数字が多いことは一目瞭然ですね。人事の世界にやっとITの波がやって来た、そして古くからの課題が沸き上がってきた、それが働き方改革だと思います。

問題は、なぜ今「改革」なのだと思います。なぜ変えなければならなくなったのか。f:id:miuratoshiyuki1962:20170727122435j:plain

就職、就社、就業

会社を辞める、いつかは誰もが会社を辞めます。辞めるには目的があります。新しい仕事、新しい土地、実家の事業承継、結婚、出産…

新しい仕事に就くにせよ、休暇を取るにせよ、究極のワークライフバランスが退職、かもしれません。

とかく一つの企業に縛られがち、と言われる日本社会ですが、企業に就職する以上当然のことと自分は思います。では、会社に入社することと仕事をすることは同じ意味なのでしょうか。以前関わったシアトルのシステム開発会社では、応募してくる人の多くは、どういう会社かという以前に自身の仕事内容が最大の関心事。つまり、一人ひとりは自分の仕事に対する明確なビジョンがあって、その仕事をする場所を探しているだけだと感じたことがあります。

結果として長く勤める、短く終わる、それは様々でした。勤続の短い人が冷遇される風潮がある日本、その風潮は企業=仕事という風土がもたらすものなのでしょうか。

どこの会社で働くか、というかつて主流だった考え方は、何をするか、に変わっていくのではないでしょうか。

 

企業人事の考え方

かつて、某電気メーカーの人事部門に9年間在籍していました。

9年間といっても、本社の人事部人事課に3年、労務に3年、工場総務に3年。とても「計画的」異動をさせていただきました。
本社の人事の時に、要員計画を作成するよう指示がありました。多くのメーカーがそうであるように、本社人事には採用権限がなく、各事業部(工場)がその機能を持っていました。つまり、本社で立案する要員計画は、あくまでも「参考指標」あるいは採用にあたっての考え方を示したものとなるはずでした。

しかし、結果として要員計画は日の目を見ませんでした。各工場を一本化できなかったことが大きな要因でした。生産している物も、人も、場所も何もかも違うのに、別の工場と同じ考え方は採用できないという考えが多く寄せられたと記憶しています。
結果として、現場の繁忙感を背景に採用が進められていきました。

その3年後、円高に伴うリストラが始まりました。社員数を約25%減らすという内容でした。要員計画が頓挫してからリストラまでの間に採用された社員は、全体の15%に上っていました。もし、要員計画が頓挫していなければ、リストラ費用も少なく、痛みも比較的小さくなっていたことでしょう。もし、要員計画がもう3年早く日の目を見ていれば、リストラの必要はなかったことでしょう。そして皮肉なことに、リストラの労使協議の場には、自分は従業員代表として臨んでいました。

数年後から10数年後をデザインするのが企業人事だと、強く強く胸に刻んだことを覚えています。

働き方の未来2035

こんな懇談会が厚生労働省で行われていました。

「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会 |厚生労働省

2016年1月から同年8月まで様々な議論がされたようです。
報告書は38頁にわたるのですが、少子高齢化の現状と技術革新のトレンド、働き方のスタイルの予測まで幅広い報告がされています。

その中の一説を引用します。
「2035 年の企業は、極端にいえば、ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となり、多くの人は、プロジェクト期間内はその企業に所属するが、プロジ ェクトが終了するとともに、別の企業に所属するという形で、人が事業内容の変化に合わせて、柔軟に企業の内外を移動する形になっていく。その結果、企業組織の内と外との垣根は曖昧になり、企業組織が人を抱え込む「正社員」のようなスタイルは変化を迫られる。」

少子高齢化による労働生産人口減少は年間27万人にも及ぶとする報告がありました。その減少を埋めるだけの労働力確保はもはやあきらめるしかありません。ICTが全てを埋められるわけは有りませんし、何より消費が落ち込みます。

2035年、あと18年後。皆さんはどんなスタイルになっていますか? そしてそのトレンドはもう始まっています。

 

組織診断って?

あまりなじみがない「組織診断」という言葉。

インターネットで検索すると身体の細胞検査みたいな結果が出ます。

https://hospital.city.sendai.jp/department/seiken.html

でも、自分が取り組んでいる組織診断は、「会社の組織を見える化する」ものです。


会社には必ず組織があります。でも、その組織の状態を測定したり数値化することは、日本企業ではほとんど行われてきませんでした。

単一民族、単一宗教といった文化の均質性が根底にある、とする意見もありました。
ではなぜ、人材採用の時に適性検査をするのでしょうか。文化が均質であれば適性検査などいらないはずです。
しかも、受け入れる側の組織や会社の状態がわからないままで、有効な人材採用って可能なのでしょうか。

数値化がすべてではありません。が、「数値化」されたデータのある組織と、「雰囲気良いよ」「明るい職場」というコメントのある組織、皆さんどちらを信じられますか?